お正月のような、のんびりした時間の中でしか、ゆっくりと心に染みて来ない番組がある。 BSの新春スペシャルでドナルド キーンさんのドキュメントを見た。 3.11の大震災後日本人になったアメリカ出身の日本文学者、日本文学研究を世界に紹介した草分けである。 なんだか引き込まれて2日連続、でついつい見てしまった。 キーンさんの理知的でチャーミングな目を見て,お話を聞いているうちに、遠くにいる有名人ではなく、自分の先生、あるいは遠い親戚の偉いおじいさんみたいな気持ちになって,呼び捨てに出来なくなってしまった。 90才と言う高齢だが精力的に動き回り、ひとと接し、研究を続ける姿勢、彼は自分がこんな風に健康で長生きできて、運が良いと言う。そして残りの時間を普通の(たぶん彼の愛している)日本人としていき、日本人として死んでいきたい、とも言う。 日本文学を愛すだけでなく、かくも日本人を愛してきたのかと、逆にこちらが彼のことをいとおしく思ってしまう。 そして今まで彼を愛してくれた日本人に対する感謝として日本人になることを決意したという。日本人であることが羨ましい、本当に日本人になりたかった、と実行で示したのだ。 うちに唯一あったキーンさんの著作日本人の戦争―作家の日記を読むを読みはじめた。いつの間にか大人になったムスメが買っていたもの。 なんだか、キーンさんの眼差しにも、当時を生きた作家たちのリアルタイムの記述にも泣けるなあ。と同時にある種の戦慄も。 経済も政治も混迷しているなかで右傾化が加速しているように感じる今日この頃、日本人である、ということがどういうことなのかを考えてみるのにちょうどいい、一冊。
by friand
| 2013-01-07 17:00
| 雑記
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