昨年より断続的に奈良の生家の整理に入っている。
無人になっていた家だが、ちゃんと住みこなせば“お屋敷”といえる造りだけに荒れ果てた姿は見るにしのびないものがある。 しかし私が帰るとこの家が大きく深呼吸するのを感じる。生きている。 この家の持つ矜持だろうか、荒れた中にも毅然とした姿を保つ生家を前にして、維持しきれない末裔として忸怩たる思いがある。 戦前志賀直哉邸をはじめ文化人の家も多く手がけてきた数寄屋造りの下島松之助棟梁の仕事には80年経った今も何の狂いも生じていない。 子供が育つには住みにくい家だった。夏涼しく冬寒い伝統的な日本の家。南側と北側の両方に廊下があり窓のある部屋にあこがれた。 唯一窓のある部屋が女中部屋だったというのは皮肉な話である。 ここは八墓村ですか? 奥から双子のおばあさんが出てきそうですね、と言った人もある。 しかし、私にとっては不思議と邪気のないこわくない家だった。 色んなものの行き先を見つけてあげないといけない。 棚の奥に私がはじめてフランスに行ったときMORAで買ったシノワがあった。 余りにプロっぽすぎて家庭では使いにくく、ずっとお蔵入りしていた道具だ。 これを見つけた骨董屋の友人が、 「これは売れるよ、いい感じで時代が出てきている」という。 ああ、持ち主の私にもずいぶん時代が出てきているけど、値打ちはどうだろう。
by friand
| 2010-03-02 21:08
| 雑記
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